私がパニック障害を克服した大きなきっかけとなったのは今で言う「暴露療法」です。
今では暴露療法のおかげで、飛行機に乗って海外旅行を楽しめるほど回復していますし、フィリピンという何のプレッシャーも無いのんきな国に移住して一人で暮らせています。
これから書くお話はあくまで私の場合はこうだったという実体験です。
全員に当てはまる訳では無いですし、回復を保証するものではありませんが、試してみるべき一つの手段として考えてもらえば良いかと思います。
認知行動療法の暴露療法とは意味が違う
私の意味する暴露は認知行動療法の苦手な状況にあえて立ち向かう暴露療法(エクスポージャー法)とは違い、単に「秘密を公にしてしまう」という暴露です。
なので、私の勝手な解釈だと思って下さい(笑)
パニック障害で仕事ができない
私は、パニック障害は典型的な予期不安から来るものでした。
一番ひどかった発症から1年~2年目はたった3分の電車にも乗れず、2分~3分のレジ待ちもできず、もうこのままどんどん何もできなくなって人生終わってしまうんじゃないかと思っていましたね。
一般的に言われる広場恐怖症というヤツです。
私がパニック障害を発症した時は今ほど知られている障害ではなかったことや、知られるのが恥ずかったこともあり、親にしか告げずに誤魔化しながら5年程過ごしていました。
もちろん、パニック障害がある上に特殊な能力があるわけでもないので、正社員として仕事ができない時もありました。
頭が悪いので身体を動かすことしかできず、アルバイトでショップスタッフやスポーツインストラクター的な仕事をしていましたね。
幸いなことに、バイトでもかなり融通の利く職場だったのでなんとかやり過ごせたということもあります。
仕事先でパニック障害を暴露してみたら改善した
インストラクターをして人のやる気を出して、人を励ます仕事をしながら、自分自身がかなり弱っているというおかしな状態でした。
それでも、毎日体動かしているというのは私にとって大事なことであり「できることがある」という精神状態を保つには重要なことで、それは今でも変わりません。
そんな契約社員状態のようなバイト生活をしていたある日、私が担当している二人の子供の生徒さんのお母さんから突然ある相談をされました。
「子供がひどい神経症になっているかも知れない」と。
二人とも私のレッスンを受けていたので一人来なくなったと思っていたらそれが原因でした。
神経症と言っても私と違って、洗った手で何も触りたくない、ドアノブを素手で触れないなど典型的な潔癖症でした。
話を聞いている間、周囲には他の人達もたくさんいたので全員どうしようもないという雰囲気。
そんな中で、私は何故か「まーいいか」と軽い気持ちで、その人の慰めになれば良いかと自分のパニック障害の話をしました。
当然、会社の人たちは5年も付き合っていたのに誰もそれを知らなかったので、周囲は唖然としていましたね。
その後はしばらくいろいろ質問されたり、どうして言わなかったなど残念がられたりもしました。
残念ながらここで、その子供のために何かをしたという美談はありません。
その子供が今はどうなっているのかも知りません。
ただ、その日から私のパニック障害の症状は一気に改善に向かいました。
パニック障害のことを知らない人に全て暴露する
それから私は知人、友人、他人関わらず私と関係する人でパニック障害のことを知らない人達全員に障害のこと、どういった行動がダメなのか伝えて行きました。
当然最初の内は恥ずかしさや情けなさもあり、それほど前向きに行けたわけではありません。
しかし、最後の方には
「パニック障害あるから変な言動するかも知れないけど何かあったら助けてくれていいから(笑)」
と完全に開き直ってましたね。
パニック障害のことを人に知られることが、これほど楽なことなのかと気付いた私の症状は日に日に良くなりました。
数ヶ月後にはいつでも降りられる各駅停車の電車であれば1時間でも乗れるようになっていました。
20分から30分程度缶詰になるような急行列車はダメでしたし、今でも車内がのんびり座れる程度に空いていないと乗れませんけどね。
発症後に初めて乗った飛行機
初めて飛行機に乗ったのは発症から6年経った時でした。
しかも、行き先は国内ではなくタイのプーケットへの出張です。
出張と言っても、ほぼ遊びみたいなモノでしたが「行ける?」と聞かれて、ここで行かなければまた行動範囲が狭まってしまうと恐怖を感じた私は「行きます」と答えました。
それから、どうすればパニック障害を少しでも防げるかとあらゆることを考えましたね。
・トイレに近い座席の場所の確保
・通路側の確保(これは同僚との並びなので大丈夫)
・前日から食べ物、飲み物を控えてトイレに行かなくても済むようにする
・酔い止めで眠たくなるようにする
私の場合はMRI検査のような狭い空間はダメですが「飛行機の通路側」であれば大丈夫でしたし、「飛行機が怖い」「墜ちて死ぬのが怖い」という恐怖は無かったのが良かったですね。
パニック障害をチェックインカウンターで上手く伝える方法
それから、最後に思いついたのがカウンターで座席の場所を確保するためにパニック障害のことを伝えてみようということでした。
当時はオンラインチェックインや事前座席指定なんてできませんでしたからね。
そして、いかに恥ずかしくないように自然に伝えることを悩んだ結果、
「パニック障害で過呼吸のクセなどがあるのでトイレに近い場所お願いできますか?」
と、思いつめずにサラッと伝えると担当者がこう言いました
「分かりました。それでは機内の担当者にも伝えておきますので安心して下さいね。」
受付スタッフが天使に見えました(笑)
世の中にこんないい人がいるのかと本気で思いましたね。
もちろん、無駄に何度もトイレに行ったり、少し不安を感じたものの、障害のことを知っている同僚も一緒だったので、何の問題もなくタイに到着しました。
帰りはチェックインカウンターがタイ人なので当時英語が話せずどうしようかと思った私はカウンターで伝えることを諦めて、機内で日本人CAさんに直接伝えました。
「今はなんともないのですが、パニック障害を持っていまして、もし発作が起きたら過呼吸なので先に伝えておきます」
これもかなり勇気が必要でしたけど、不安を抱えたまま飛んで、飛行機の中で発作を起こす位なら笑ってられる内に言って、スッキリとした方が100倍マシでした。
パニック障害は英語でなんていうの?
パニック障害は英語で「panic disorder(パニックディスオーダー)」、パニック発作のことを「panic attacks(パニックアタック)」と言います。
海外旅行に行く際に出国は日本人だから良いけど、帰りはチェックインカウンターやCAさんが外国人だけということが普通にあります。
まだ、克服しきれていない初期の段階では、多少お金が掛かってもできるだけJALやANAのような日系の航空会社を選びましょう。
日本路線の場合は日本人乗務員が一人はいる航空会社を選ぶことをお勧めしますが、どうしても無理な時もありますからね。
万が一、飛行機の中でパニック発作を起こしたとしても、CAさんに「panic disorder」と伝えればCAさんも対処しやすくなります。
伝えることを恥ずかしがらない
JALのホームページには
「医師と相談した上で、乗車の際は有効な薬を持参して下さい」
ANAのホームページでも
パニック障がいのお客様のご搭乗について
お客様の状況や必要なお手伝いをお知らせください。
あらかじめ航空旅行が可能かどうかや、発作が起こった際の対処方法を主治医にご相談ください。
ご搭乗時には発作が起こった際に有効なお薬をお持ちください。
ご自身で服薬できないかたは付き添いのかたの同伴をお勧めいたします。
引用:ANA
などと記載されています。
このように、今やパニック障害は一昔前のような「ただの思いこみでしょう?」と言われて理解されない障害ではありません。
恥ずかしがらずに勇気を持って一言伝えるだけで、かなりの不安が取り除かれます。
もちろん、この話は全て私の経験ですので、全員に当てはまることはないと分かっていますが、暴露法を試したことが無いのであれば是非試して欲しいですね。
しかし、私はパニック障害を克服するには少しづつ段階を踏まないとダメだと思っているので、荒治療で一気に治そうとするのは止めた方が良いと思います。
さすがに飛行機は人に迷惑をかける可能性が高いのに無理して搭乗するのは良くありませんからね。
多少の無理は良いにしても、明らかにダメだと感じる場合は「まだ」止めておきましょう。